一日不讀書口中生荊棘(2002年6月) 大島 純男
第三回韓日キリスト教共助会修練会が4月の1日から3日間、ソウルのイエス教長老会女伝道会館を会場に開催された。わたしは、閉会の翌日の午後、日本福音ルーテル挙母教会の明比輝代彦牧師と共に、安重根記念館を訪れた。近くの公園には韓国の春を告げるレンギョウの黄色い花が咲き誇るかのように咲いており、桜も満開であった。桜の花を静かに楽しむ人々は大勢いたが、日本のような酔客を見ることばない。
ソウルタワーの近くにその記念館はある。安重根は、1909年10月26日、ハルビン駅で伊藤博文を殺害した人物である。韓国では、今なお多くの人々が、祖国の独立と東洋平和のために命を捧げた彼を義士と呼び、 記念館に足を運んでいる。処刑されるまで半年しかなかったが、彼の遺墨は200余点に及ぶと言われている。その中に「一日不讀書口中生荊棘」というものがある。文字どおり、「一日でも書を読まざれば口の中に刺が生じる」という意味を持つ。どれだけ社会的な活動をしていようとも、読書を怠ってはならないという思いが表れている。彼は、19歳の時、フランス人の神父から洗礼を受け、伝道に力を尽くした時期もある。
キリスト者にとって書と言えば、聖書である。この書を一日読まなければ口の中に刺が生じるという思いを果 たしてわたしたちは持っているだろうか。
韓国と日本でサッカーのワールド・カップが開催され、韓国を訪れる人は多い。しかし、旅行のガイドブックには、名所やエステや焼肉料理などの紹介はあっても、西大門刑務所歴史館や、前述の安重根記念館、水原の堤岩教会などは省かれている。韓日の歴史に意識的に関わろうとしなければ、わたしたちは真の歴史を知ったことにはならない。教科書に書かれていない歴史を自分の目で確認する作業も、別 の言い方をすれば、読書と言えるであろう。聖書を読み、歴史を読む作業を一日たりともおろそかにしないよう努めたい。