松本共助会とその歩み 朴 大信(パク テシン)
松本共助会の歩みは、(記録によれば)1976年の開始から四〇余年を数え、日本各地に展開する地方の共助会の中では、京都共助会に次ぐ長い歴史をもちます。その初期には和田正、百瀬浄、島崎光正らが中心となっていましたが、会員数は昔も今も、だいたい10数名で推移しているようです。現メンバーの教会的背景は多様(日本基督教団、万国福音教団、無教会など)ですが、活動の中心は月一度の読書会であり、一同楽しみにして毎回集います。会員の高齢化に伴い、足や健康の問題は祈りの課題ですが、他方では各メンバーの多忙なスケジュールを毎回調整しながら、現在は皆ができるだけ集まりやすい市立中央図書館内の一室を主会場に(時々、会員の所属教会でも)、読書を通じた刺激的で豊かな交わりに生かされ続けています。
現在の月例会では、『内村鑑三―悲しみの使徒』(若松英輔著)を共に読み深めています。少し最近の読書歴をたどりますと、M・L・キング牧師、ガンジー、浅川巧(『白磁の人』)、茨木のり子(『ハングルへの旅』)、魯迅(『阿Q正伝』)、またかつてはヘルマン・ヘッセやドストエフスキー等に遡ります。ヨーロッパ・アメリカ圏からアジア諸国に至る文学作品に比重が置かれているのが一つの大きな特徴です。ここには、狭い意味での信仰的な議論に固執することよりも、文化的・歴史的・世界的視野において偉人らの多様な生き様に学び、現実世界の課題を発見・共有する中で、キリスト者としての自らの姿を見つめていけるような、そんな会としての方向性が現れていると言えます。毎回、自由な雰囲気の中でメンバーの個性や経験が生かされ、示唆に富んだ学びが与えられていることは感謝に堪えません。
読書会以外にも、折に触れて、雑誌『共助』を皆で読み合わせることがあります。また、テーマと講師を設定して宿泊研修会を催すことも、特別で意義深い活動の一つです(昨年は友寄隆静さんを講師にお招きして、沖縄問題について学びました)。昨年のクリスマスには、飯島信委員長をお迎えして礼拝と親睦のひと時を持ちました。さらに今年6月に開かれた韓日修練会の報告会も二人の参加者によって行われ、共にその実りを分かち合いました。
松本共助会の群れは、現在その中心で下山田誠子さんが熱心にお世話とリードをしてくださりながら、皆で和気あいあいと協力して活動を進めています。他方、以上に記した恵みの中で示される今後の課題というのもあります。その大切な一つは、現在の月例会(読書会)を通じて与えられている交わりが、さらに何を目指すものであるか。どこに向かって育まれていくのか。その展望を自覚することだと言えます。具体的には、基督教共助会の柱である「基督の他自由独立」・「主に在る友情」を、どのように内実化していくかという課題とも重なります。百年の歴史を刻む共助会の根底に貫かれてきた命の水脈に、いかにして触れ続けるか。これは、地方共助会における独自性や日常的な交わりと、基督教共助会という全体の理念や歩みとの「共働性」という課題にも通じるものでしょう。両者互いに、実感と喜びの伴う相乗効果をいっそう生み出す関係へと導かれんことを願ってやみません。これまでの信仰の先達の歩みや歴史に学び、共助会における人格的な出会いに支えられる中で、この時代、この場所にあって、なお神の御心に適い続ける松本共助会としての歩みを望みたいと思います。畏れをもって祈りつつ。(日本キリスト教団松本東教会伝道師)