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誇りを持てる国でありたい(2013年6号) 角田 芳子

 東日本大震災から、二年半が経過しようとしている。大地震に加えて、原発事故という未曽有のできごとに巻き込まれ、なかなかそこから抜け出すことができない。復興のためにと私たちが捧げ続けているお金は、適切に使われているのだろうか。……そんな疑問を感じながら過ごす日常に、衝撃的なニュースが飛び込んできた。事故を起こした当の東京電力は、汚染水が海に流出していると発表したのだ。しかも、二年前からだというのである。こんな重大な事実を今まで隠し通してきたことが、信じられない。海は世界の国々をつなぎ、多くの生物を養っている場所であるから、一番恐れ、そうあってはならないと願っていたことではないか。これから大きな影響が出ないことを期待するが、それにしても東京電力の管理者の倫理感は全くなくなってしまったのだろうか。嘘をつき、事実を隠蔽すれば傷は余計に深く、大きく広がることを予想もできないほどに腐ってしまったのだろうか。どうして、もっと早く恥をかなぐり捨てて世界に助けを求めなかったのであろうか。そればかりでなく、電気代を値上げし、「復興のため」と嘘の上塗りをしてきた罪は大きく、責任をとらなければならないであろう。

  しかし、このニュースをいち早く世界が捕え、大変な関心ごととして注目している。一昔前であれば、関係者の口を封じれば隠蔽できたことも、インターネット時代ではとても無理である。情報は、ネットを通してあっという間に、世界に広がっていくのである。そんなことは百も承知のはずの東京電力は、なぜそんな大それた嘘をつき通したのか、まるで日本の鎖国時代を感じさせる。半官・半民の組織には、まだ精神的な鎖国状態が続いているのではないか。しかも、二年前といえば民主党政権時代であり、必ずしも政党間の違いともいえない。矢内原忠雄が、主義のためには東大教授の地位を辞したような潔さが全く感じられない。私は、一日本人としてとても恥ずかしく、世界に対して申し訳なく思い謝罪する者である。何とかして、一刻も早く汚染水流出を留めなければならない。

  日本人は、勤勉・正直がモットーとされてきた。あの国が意見を言うなら耳を傾けよう、もう一度考え直してみようと思ってもらえるような祖国であってほしい。そのためにも、過ちは誠実に謝罪し一歩ずつ慎重に前進してほしいと期待する。