言葉を力とする。 飯島 信
「見よ、闇は地を覆い 暗黒が国々を包んでいる。
しかし、あなたの上には主が輝き出で 主の栄光があなたの上に現れる。」(イザヤ書 第60章2節)
2024年の年が明けた。基督教共助会創立より105年、敗戦の時より79年、戦後においてこれほどの闇が私たちを覆うとは、誰が予想し得ただろう。ウクライナに続き、パレスチナでも、暗黒の力が激しく民を襲っている。空爆により、あるいは地上での軍事作戦により、破壊された瓦礫の山が、傷つき、血を流して逃げ惑う人々の姿が、連日のように私たちの目に映し出されている。世界は理性を失い、まるで暴力が支配するかのような様相を呈している。
そして、国内である。政権の中枢を担う者たちが次々に裏金作りに手を染めている事実が明らかになった。内閣支持率は、自民党政権が復帰した2012年12月以降で最低を更新(注1)し、政治に対する国民の不信はここに極まったかの感すらする。まさに、「見よ、闇は地を覆い 暗黒が国々を包」む内外の現実が私たちの眼前にある。
では、どうするのか。私たちに何が出来ると言うのだろうか。
この時、だからこそ、歴史は私たちに教えている。
まず、自分の遣わされた馳せ場で、十字架による贖いと復活の信仰に堅く立ち、現実への力となる言葉を語り得る者となることである。心の扉を閉ざすことなく、隣人との間に平和を造り出し、その関わりを一つひとつ着実に広げて行くことである。そのためには、何よりも、己の裡においてこそキリストの十字架は有り、この私のために今なおキリストが血を流されている事を知らなければならない。それ故に、打ち砕かれた魂を抱いて他者に向き合い、他者を信じ、他者との間に信頼を育み得た時、私たちが発する言葉は孤立から解き放たれ、現実に分け入る力となる。その力を持って課題に向き合い、平和構築への道へと踏み出すのである。
3月、韓国の友との新たな出会いを求めて私たちは旅立つ。韓日の先達が歩んだキリストの十字架における交わりを今一度見出すためである。韓日の間にも避けがたい暗闇が横たわっている。しかし、私たちはその闇を払い除ける十字架の光を与えられている。訪れる私たちの使命は明らかである。輝きをさらに増し、現実へ分け入る力となる言葉を共に紡ぎ出すことである。
ウクライナ、パレスチナ、ミャンマーなどにおける戦いの即時停戦と、神への執り成しと憐れみを祈り求めつつ、この1年、言葉を力とする歩みを目指したいと思う。
〈注1:2023/12/11 NHK 世論調査〉
(日本基督教団 小高伝道所・浪江伝道所牧師)