【解説】片柳榮一さんの文章について 飯島 信

今回の片柳さんの文章は、2023年6月2日(金)、オンラインで行われている第14回「エチカの会」で片柳さんが発表した原稿を、片柳さんと編集部の了承を得て掲載するに至ったものです。 「エチカの会」については、昨年12月発行の第8号15頁で、一之瀬ちひろさんが短く紹介をしていますが、それに加えて文章の背景を説明したいと思います。

2004年5月、当時日本クリスチャンアカデミー関東活動センター所長であった大津健一さんと私が呼びかけ人となり「思想・良心・信教の自由研究会」が発足しました。研究会には、「日の丸・君が代」の強制に抗う教師や市民、学者や弁護士などが集まり、実践と共にそれを理論的に支える学びの場を創り出していました。 会には、ほどなく岡本厚さん(『世界』編集長・当時)、高橋哲哉さん(東大教員・哲学)、西原博史さん(早大教員・憲法)も加わり、会の中心的な役割を担い、研究会は私が東京を離れる昨年3月まで18年にわたって続けられました(大津さんは2017年、西原さんは2018年に逝去)。

私が福島に赴任した4月、首都圏にお住まいの高橋さんと私は、相談の上、5月からオンラインで会を再開することを決めました。高橋さんは、会の名を新しく「エチカの会」とすること、また、それまで隔月置きに行っていた集まりを、この間の急激な内外の情勢の変化に対応するために毎月開催することを提案し、私も同意して今日を迎えています。

ところで、年が明けた今年2月に行われた第10回「エチカの会」の主題は、「ナチスの罪の時効をめぐる論争について」で、高橋さんの発題でした。今回片柳さんが取り上げたジャンケレヴィッチの「われわれは許しを乞う言葉を聞いたか」の論文は、続く3月の会で、韓国映画の「Secret Sunshine」と共に、同じく高橋さんによって取り上げられました。

その結果、4月以降の会は、「許し」をめぐる高橋さんの発題に対する他の参加者の応答の時となり、その一つが今回の片柳さんの文章です。 この時の6月の会では、片柳さんと共に、関口美樹さんも「Secret Sunshine」について、深く鋭い応答を準備して発表しています。

今回の文章は、会に参加をされていない方には、理解することが難しい内容もあると思われますが、それ以上に、『シュピーゲル』の記者の日本に向けられた厳しい視線、関屋綾子さんの日本軍によって拷問死させられた中国系ジャーナリストを夫に持つ女性との出会い、さらには安倍晋三氏に対するペロシ下院議長(当時)や最後に紹介されている李仁夏(イインハ) さんの言葉など、 私たちが心に深く留めておきたい事柄が幾つもあり、ぜひ掲載をと願った次第です。

なお「エチカの会」は、毎月第一金曜日19:00―21:00に行われています。 11月の発題の一つは、「フェミニズムが生む分断 ― 2015年以降の韓国フェミニズムの動向とその影響」で、発題の主旨は「……2015年以降の韓国フェミニズムの歴史に注目する。フェミニズムサイト『メガリア』の誕生に始まり、2017年の#MeToo 運動、2018年の脱コルセット運動といった主要なフェミニズムの動きを検討し、それぞれが韓国社会に与えた影響と、今後の韓国と日本社会におけるフェミニズムの役割について議論する」との概要が担当者から送られて来ています。

以上、片柳さんの文章の背景について解説をしました。
(日本基督教団 小高伝道所・浪江伝道所牧師)