寄稿

小高教会幼稚園にて(2022年9月)新藤早代

「なにを頼りに見つめていけばいいか」、小高での滞在制作はそればかり考えていました。贅沢な、それでいて正しい心のざわめきだったと思います。街と対話するには短い2週間の滞在でしたが、この街の隙間は、不在であり、不在でしかない、そんな強さが好きな街でした。そう思うことができる環境を作っていただいた小高の皆さんと、南相馬市に大変感謝しております。

そんな街でフラフラと、私が滞在していた時期にたくさん小高に飛んでいた揚羽蝶のように過ごす中で、一番自分が落ち着く場所が小高教会幼稚園でした。閉園してから11年間、震災当時のまま残された幼稚園。備品の数々は一見寂しそうに見えますが、そこに在ることに誇りを持っている、そんな強さを感じました。夜、誰もいない幼稚園で撮影をしたり展示の準備をすることがありましたが、夜中に自宅のキッチンの換気扇の下で煙草を吸っている時のような、不思議な心の落ち着きがありました。小高に住む皆さんや、牧師である飯島さんの想いが詰まっている場所だからこそ、私自身が訪れた時にそう思ったのだろうと、教会幼稚園で展示をさせていただいて直感的にわかりました。とても大切な感覚をいただいたこの街のことを、自分なりにもう少し解釈していきたいです。

2022年11月21日               (写真家)