真実の証言を語り継ぐ (2007年7月号) 角田秀明

沖縄県平和祈念資料館に行くと次のようなメッセージが書かれています。

「沖縄戦の実相にふれるたびに 戦争というものは これほど残忍で これほど汚辱にまみれたものはないとおもうのです  この なまなましい体験の前では いかなる人でも 戦争を肯定し美化することは できないはずです  戦争を起こすのは たしかに 人間です  しかし それ以上に 戦争を許さない 努力のできるのも 私たち 人間 ではないでしょうか  戦後このかた 私たちは あらゆる戦争を憎み 平和な島を建設せねば と思い続けてきました これが あまりにも大きすぎた代償を払って得た ゆずることのできない 私たちの信条なのです 」

 一九九一年から始まった聖学院高校二年生の沖縄平和学習プログラムで必ずお聴きするのが「ひめゆり学徒隊」の生き証人であられる宮良ルリさんの証言で す。今年八一歳になられる宮良さんは、今年も私達の訪沖を心待ちにしておられます。戦後長い間、戦争の生き残りとして周囲の冷たい目に身をさらしながら 固く口を閉ざしていた宮良さんは、遂に口を開き、自らの戦争体験を語るようになりました。毎年百数十回の講演を引き受け、声が出る限り「命どぅ宝」とい うメッセージを伝え続けています。軍国主義教育に人生をもてあそばれ、「もっと違う時代に生きたかった」と最期の言葉を残して死んでいった多くの友を彼 女は忘れることはできないのです。教育が独立性を奪われ、時の権力に利用され、その結果どれほどの尊い血と涙が流されたか、二度と戦争はしてはならない と今年も語ってくださいます。これからの日本を担う高校生に、心の底から、あたかも懇願するかのように問いかけます。「この命のバトンをお渡しします。 受け取ってくれますか?」

 人の歩みは古さと新しさの繰り返しであり、時を重ねるに従って、初心や苦い教訓もだんだんと色あせたり、変質してきます。戦後、日本は二度と戦争をし ないと堅く誓い、日本国憲法九条にはっきりとその決意を表明したはずです。

  使徒たちは時の権力者らの尋問と脅しに対して、
「わたしたちは、見たことや聞いたことを話さないではいられないのです。」(使徒四章二〇節)と黙することを拒否しました。偽装や粉飾で汚染されている現代社会において、時がよくとも悪くとも、真実を語り継ぐ証人とさせていただきたいと願っています。

「あなた方には世では苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている。」 (ヨハネ一六章三三節)