東京共助会・報告

開催報告:東京共助会報告(4月)〈報告者:鈴木幸江〉

4月27日(土)10時~12時  
世田谷総合支所太子堂出張所2階 会議室 参加者10名

飯島 信氏 「沖縄の人々の問いかけを考える」飯島さんの発題内容です。
「初めて沖縄に行ったのは神愛バプテスト教会の饒平名 長秀先生に夏期伝道実習をお願いして受け入れて頂いた2002年7月です。この時は沖縄の戦争の歴史については知っていましたが、基地の問題は自分の中に中心的課題としてはありませんでした。2014年、『思想・良心・信教の自由研究会(注1) 』で、高橋哲哉(注2) さんから沖縄の米軍基地引き取りについて問いかけを受けました。初めは、高橋さんは沖縄の人々のように基地問題で苦しむことを体験しない中で、どうしてそのような問題提起が出来るのだろうかという疑問がありました。しかし、高橋さんの誠実さを知っている私は、その問いに応答しなければという思いが次第に強くなり、学び続けた結果、2017年2月『沖縄の基地を引き取る会・東京』を仲間と1緒に発足させました。その後、神奈川でも運動が生まれ、『沖縄の基地を引き取る会・首都圏ネットワーク』と名称を変えました。
 
現在日本では、国土面積で0・6%、人口で1%の沖縄県に、米軍基地の約70%が集中しています。先の大戦後、米国の統治下に置かれた沖縄には、『銃剣とブルドーザー』によって米軍基地が作られていきました。『本土』にあった米軍基地も、『本土』住民の基地反対運動が激化するのに伴って、日米両政府の合意のもとに沖縄へと移されていきました。そして、『本土』に住む私たちの目から基地が見えなくなり、基地の危険性を知らずに生活出来るようになった結果、日米安保条約を支持する人の割合は日本全体の80%にも上っています。
 
世界で1番危険な沖縄の普天間基地の移設先は、またもや沖縄の辺野古とされました。沖縄のこれまでの歴史を考える時、これは沖縄差別であり、沖縄は日本の植民地ではないかと思っても不思議ではありません。これまで、基地が沖縄に集中しているのは、日本の安全を守るためには沖縄が地理的に適しているとも言われて来ました。しかし、この間、アメリカの政府高官の証言によって明らかになったのは、基地が沖縄に集中している理由は日本政府の強い希望によるものである事、又、昨年安倍首相は、基地を『本土』に移そうとしても『本土』住民の理解が得られないと明言しています。
 
結局、日米安全保障条約による『安全』は欲しいが、危険な基地は要らないという『本土』の私たちのエゴイズム、それこそが、沖縄に基地を押し付けているのだと思います。
 現在このことに気付いた人々が、11の都道府県で沖縄の米軍基地を『本土』に引き取ろうという運動を始めています。」 
 
飯島さんは、沖縄の米軍基地を「本土」に引き取り、私たちの基地問題とすること、そして、沖縄の過重負担を取り除きつつ、何故このような危険な基地があるのか、基地は本当に必要なのかを考えなければならない、と語りました。
 
この話を受けていろいろな意見が出ました。「沖縄の人々の痛みを共有することが大切、そこから出発するしかない。基地があろうがなかろうが日本は安全ではない。北朝鮮、ロシア、中国等に囲まれ、基地が沖縄だけに偏在していることは問題。もっと日本が東アジアに於いて、どういう役割を持つのか考えることが必要。憲法だけでなく地方自治を学ぶ必要がある。地方自治は住民の意思を憲法で保障している。外交と防衛は憲法の上にあるのか、その意味では我々も沖縄と同じような立場に置かれている。」
 
あるいは、「沖縄の米軍基地を沖縄の過重負担を減らすため移すことには賛成だが、『本土』のどこに移すかが問題。国民の大部分は自分の所には来てほしくないと思っている。ある雑誌で住民に比較的害がなく、安全な候補地を具体的に挙げていたが、そういう場所を提示するのも『引き取り』に効果があるのでは」との意見に対し、「それでは自分たちの問題にならない、基地は沖縄の問題ではなく自分たち『本土』の問題、日米安保条約に世論の多数が賛成している以上、基地は『本土』が引き受けなければならない。その意識を持って考えることが大切であり、どこに移すかは国が責任をもって決める」ことなどが語られました。
 
さらに、「基地問題を沖縄の問題だと思っている『本土』の人が、そうではなく実は自分たちの問題であることに気付き、『原発』と同じように当事者意識をもって色々な立場の人が議論することが大切、その中からいろいろなことが見えてくる。日本人は何についても沈黙していることが多く、そのことが問題」等々、定刻時間をオーバーするほど様々な意見が出ました。
                  
[注1] 2004年5月、大津健1(NCC総幹事・当時。故人)、高橋哲哉、岡本厚(『世界』編集長。現社長)、西原博史(早稲田大学教授・憲法。故人)、飯島信の5名が発起人となって始めた研究会。岩波書店本社会議室を会場に隔月置きで開催され、15年の歴史を持つ。当初は、「日の丸・君が代」の学校現場における強制の問題が主なテーマであったが、その時々の時事問題を取り上げ、研究・討議を行っている。
[注2] 高橋哲哉:東京大学大学院総合文化研究科教授。著書に『沖縄の米軍基地』『犠牲のシステム福島・沖縄』『教育と国家』『靖国問題』『戦後責任論』『歴史/修正主義』『反・哲学入門』など。2015年、基督教共助会夏期信仰修養会主題講演講師。