【発題4】京都共助会の活動報告 片柳榮一
京都共助会は昨年から月一度の例会で、奥田成孝先生の『一筋の道 ― 森明先生との出会をめぐって思い出すままに』を読んでいる。この本は、かつて奥田先生が1984年から86年にかけて『共助』誌に連載したものを、1995年に北白川教会創立60年を記念して一冊の本にまとめたものである。この本が入手困難になってきたこともあり、2022年に井川満さんが中心となって、再刊するはこびとなった。初版は32節に分けられて通し番号が振られているだけであったが、この度は、各節の内容を示す「見出し」をつけて、読みやすくする工夫もほどこされた。出席者は10名ほどで、3節ほどをまず読み上げ、続いて発表者がまとめを行い、それを中心に話し合っている。読み進めながらあらためて思わされたのは、奥田先生が生きた時代のただならぬ気配である。
20世紀の前半、世界全体が行方を見失って右往左往し、結局二つの世界大戦に追い込まれて行くような中、日本もその荒波をかぶって、どう動けばよいのか、誰も定かな見通しを持てず慌てふためくその日本の政治の中心部の苦悩を身近に感じながら、奥田先生は育っていったように思える。現在の世界が不気味にその暗がりを増している中で、これまでになく奥田先生の手探りの歩みが身近に感じられる。
北白川教会を中心として京都共助会は活動しているが、北白川教会は飯島信先生に代務者、山本精一先生に信徒伝道者となっていただいている。最近若い学生たちも礼拝に出席しているので、京都大学のなかでの学生共助会を復活させようと思い、学生部に学内での活動をさせてほしいと願い出たが、学生部からは、現役の教授二人の保証者がなければ許可できないと厳しい返答が返って来た。確かにかつてのオーム真理教や、また最近の「世界平和統一家庭連合」などの動きに神経を尖らせている大学当局の懸念もわからないでもない。しかしこうした締め付けが、現在の日本社会の精神的閉塞状況の一つの現れであることを思うと同時に、日本の中での、殊に大学という知識人集団の中での「宗教」というものへの価値評価の低さを、痛みをもって思わされた。仕方なく、教会の中で若者たちと読書会を持ち、現在森有正の『遥かなるノートルダム』を読み続けている。私たちなりの手探りの歩みを続けていくしかないと思っている。
(日本基督教団 北白川教会員)