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三 主にあるアジアの友垣と ―1989 年以降の時代の動き― 片柳榮一・佐伯勲著『90 年史』P186

(一)韓国の友との交わり激動の時代を経て、戦後も引き続き、韓国の主にある友たちとの交わりをとおして、一九九二年三月に韓日基督教共助会修練会がソウルで持たれたが、三月三十一日、韓国共助会員が集まって、「韓国基督教共助会」が、李英環を委員長、尹鍾偵を総務として発足、設立されたことは私たちの思いを超えた神の御業であった。そのときの喜びと感謝と畏れを、共助会の罪責を明らかにし、韓日基督教共助会修練会参加者が「韓国の共助会 の友たちへ」という宣言文に記した。

「韓国の共助会の友たちへ」

基督教共助会は、一九一九年に創設され、以後、今日まで一○名をこえる韓国の友を与えられてきました。 創設の年一九一九年は、三・一独立運動の年であり、その後の日本の苛酷な植民地支配の中にあっても、韓国の友と主にある友情を結ぶことをゆるされたことは、主の恵みとして感謝にたえません。さらに一九四五年以 後、日本の罪責を主にあってゆるし、主にある友情の手をさしのべる新しい友を与えられたことも、つきない 感謝です。そのような主の恵みと主にある友情に支えられて、今回はじめて韓国の地において共助会の修練会を持つことをゆるされました。

海をこえてこの修練会に参加した私たちは、深く感謝すると共に、主の前に、また韓国の友の前に、隣国との関係における日本の罪責と私たちの罪責を改めて省みさせられ、十字架の主を仰がしめられました。かつて、 私たちは韓国の人々の独立の願いを理解せず、その民族性を奪い同化を強要する日本の国家体制に反対せず、 数々の暴虐な支配に目をつむりました。私たちはまた日本の諸教会と同様に侵略戦争や神社参拝等の偶像崇拝に抵抗せず、それに抵抗して苦難を受けた韓国人キリスト者を見過ごしにしました。一九四五年以後私たちは、日本もまたその責任を負っている南北分断をはじめとする諸問題に苦悩する、韓国の友たちの祈りを共にすることがあまりに少なくありました。在日韓国人の人権や差別の問題についても同様であります。私たちは 韓国の友たちの忍耐と寛容に甘えてきたのであると、痛切に思わざるを得ません。韓国におけるはじめての修練会のこの記念すべき時に当り、私たちは、これらの罪責を主にあって担い、主にある友情を培いつつ、この時を備えてくれた先達たち、特に天に召された李台現、堀信一、澤正彦、また病の床に臥している和田正の諸兄を想います。私たちはこれらの良き先達たちの歩みにならい、私たちの罪責を 具体的に直視し続け、福音による日本の民主・平和・人権のために努力し、韓国の民主・平和・人権、さらに 南北統一のための友たちの努力に祈りを合わせたく思います。またさらに、いつの日か両国をこえて、アジアや世界の主にある真の民主・平和・人権のために、手をたずさえて仕える日の来たることを心から願います。 1992 年 4 月 1 日 韓日基督教共助会修練会 日本人参加者

なお、このときの修練会では、四月一日には堤岩教会で礼拝した後、姜信範牧師の案内で田同禮ハルモニ(次頁写真) を訪問した。田同禮ハルモニは、日本の官憲による村の教会堂焼き焼き打ちによって、二〇歳代の初めに夫を失った時以来、七十年にわたり教会を支え、あの事件の起こった午後二時には毎日教会で祈り続けてきたという、九○ 歳をこえた婦人である。堤岩里における最後の生き証人の方であるが、そのとき、日本から八○歳を超えた澤崎良子が参加。熱河宣教で夫澤崎堅造、次男の新、次女の香を天に捧げた良子と信仰一筋に歩んできた二人の老婦人が 手をとり合って祈る姿は、私たちの希望の未来、東アジアの真の和解と平和を指し示す光に包まれた忘れがたいこととして残っている。

この韓国共助会の設立は、過去の日本の韓国への罪過に対する前掲の共助会の宣言文では言い尽くしえない友情 の結実であり、神の赦しと恵みのあらわれと受けとめるほかはない。

双方の共助会が手に手を取って、このキリストにある友情をもって、民主・平和・人権のために貢献するように 成長することを、願って止まないものである。 そして、この年から五年に一回、一九九二(平四)年主題「真の友情から問いかける日韓関係」、一九九七(平九) 年主題「アジアの宣教―贖罪と終末の信仰に生きる」、二〇〇二(平一四)年主題「アジアの希望とキリスト者の使 命」、二〇〇七(平一九)年主題「キリストにあって、友となる」と、韓日基督教共助会合同修練会が持たれてきた。 また、澤正彦以来、時が満ちたかのように共助会員(下竹敬史・佐伯勲・森川静子)の韓国留学が続いたこと、日本の共助会員の韓国訪問が相次いだことは、韓日の共助会員が隣人として出会うということがどういうことかを指 し示しているように思われる。

また、この間、韓国の皆さんと主にある友情を深めてきた。共助会の修養会に、姜信範牧師(一九八七年、一九八九年)、共助会員の洪彰義長老(一九九九年)、 朴炯圭牧師(一九九五年、一九九八年、一九九九年、二〇〇七年、二〇〇八年)、 洪根洙牧師(一九九五年)を共助会の修養会に招いた。驚くべきことに、朴炯圭牧師、洪根洙牧師は、日本の共助会の修養会への参加の中から共助会員になられたことも感謝にたえない。