大嘗祭についての声明

内閣総理大臣 安倍晋三 殿

「あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない。」(出エジプト記 第20 章3 節1955 年改訳)

本年11 月14 日(木)から15 日(金)にかけて、新天皇即位に関わる重要な皇室行事である大嘗祭が行われようとしています。

私たちは、この大嘗祭が、日本国憲法に定められた政教分離の原則に違反するだけでなく、天皇及び公務員に課せられた憲法を尊重し擁護する義務にも違反し、さらには、神道の教理に基づき天皇が神格化される儀式であることを指摘することによって、大嘗祭に対するキリスト者としての深い懸念を表明いたします。

以下、理由を述べます。

1.日本国憲法第20 条に違反すること。

日本国憲法第20 条は、政治と宗教の厳格な分離を定めています。それは、戦前の大日本帝国憲法下、一宗教施設である神社に対する参拝が、時の国家権力によって日本国内のみならず、植民地であった朝鮮・台湾の人々にも強制され、信教の自由が著しく損なわれた事への反省から、過ちを二度と繰り返さない事を決意してのことでした。

然るに、天皇が神道行事である大嘗祭を行うことは、憲法第20 条に定められた政教分離原則を逸脱し、再び戦前の過ちを繰り返すものとなります。

2.日本国憲法第99 条に違反すること。

日本国憲法第99 条では、天皇及び公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務が課せられています。しかし、1.で説明したように、第20 条に定められた政教分離原則に違反することは、憲法第99 条に記された義務にも違反します。

3.日本国憲法第1 条に違反すること。

日本国憲法第1 条は、天皇の地位は、日本国及び日本国民統合の象徴であると定めています。象徴としての天皇に求められているのは、あらゆる政治権力・宗教からの中立性です。それにもかかわらず、大嘗祭は明らかに宗教である神道行事であり、さらに神道の教理によれば、天皇が神となる宗教儀式です。私たちは、象徴とは、全ての政治権力及び宗教からの中立を意味し、天皇が神道行事である大嘗祭を行うことは、国及び国民統合の象徴と規定した憲法第1 条の精神に背馳するものであると言わざるを得ません。

以上の理由により、私たちは、大嘗祭実施に最終的な責任を持つ安倍晋三内閣総理大臣に対し、これまでの皇室行事を含め、憲法第1 条に規定されている国及び国民統合の象徴としての天皇の地位に相応しい行事の在り方とは何か、特に宗教との関わりについて速やかに見解を明らかにすることを求めます。

2019年9 月16 日(月)

日本基督教団 西東京教区 社会部