神の国(2009年6月号)鈴木 幸江  

 忘れられない譬え話がある。ある人が神様に天国や地獄とはどんな所か見てみたいと熱心に頼みました。神様はその願いを聞き入れてその人をまず地獄に連れて行きました。地獄はちょうど昼食時で大きな部屋の真ん中に大きな大きな鍋があり、その中にはうどんが煮えていて、辺りに美味しそうな香りが漂っていました。ところが、その鍋の周りに集まった人たちは大騒ぎ、そこには長い長い箸があり皆その箸でうどんを食べようとするのですが、箸が長すぎて自分の口に入れるまえに他人の箸にぶつかって食べられないのです。お腹が空いてイライラした人達は、「おい、おまえ退け。俺の箸がぶつかるじゃないか」「何だとお前こそ邪魔だ」と罵り合い、とうとう殴り合いのケンカまで始まりました。それは正に地獄のような有様でした。

  さて、次に天国に行ってみると、そこもちょうど昼食時でした。大きな部屋の真ん中に大きな大きな鍋があり、うどんが美味しそうに煮えています。周囲に集まった人達、そして長い長い箸……でもそこに争いはありませんでした。皆、長い箸でうどんを上手に挟みそのうどんを自分の口にではなく、ちょうど箸の先にいる人の口に運んでいるのです。「さあさあ沢山食べてくださいよ」「うん、美味い、今日のうどんは格別だ」皆、満足そうに食べています。そこは本当に天国のように和やかでした。

  天国も地獄も状況は全く変わらないのです。異なっているのはそこに居る人達の心でした。その心の在り方によって天国と地獄ほどの違いがでてくるというのです。今、私達はともすれば状況にばかり心を奪われて、相手を思い共に知恵を出し合って助け合うという心の在り方を忘れているのではないでしょうか。

 「実に、神の国はあなたがたの間にあるのだ」というイエス様の御言葉を肝に銘じ、今年も基督教共助会夏期信仰修養会に集い、「主に在って共に助け合う」この世にある私達の歩みを学び深めたいと思います。