宇宙を支配する神(2009年7月号) 小菅 敏夫

 「あなたの天を、あなたの指の業を わたしは仰ぎます。月も、星も、あなたが配置なさったもの。そのあなたが御心に留めてくださるとは 人間は何ものなのでしょう。人の子は何ものなのでしょう あなたが顧みてくださるとは。」(詩編八章四節五節) 天地を創造された神がこの二十一世紀の宇宙の姿を見たならば、なんとおっしゃるであろうか。

  私は、宇宙法政策について研究してきたものとして、私達人間の思い上がりと横柄さに危機感を覚えずにはいられません。私達人間は,二十世紀後半に入って初めて宇宙への活動を開始して、未だ半世紀しかたっていない。しかしその間科学技術の発展と共に宇宙活動は、限りなく拡大し人間の欲望の赴くままに進められてきました。宇宙の利用は、地上における人間の活動を宇宙空間や天体に人間の支配を及ぼすことに競争をもたらしています。一面では、私達の生活に利便性をもたらした技術(情報通信や観測や探査)を評価出来るが、宇宙空間を軍事的目的に利用することで地球上の力による紛争の解決に新たな手段をもたらすことになりました。最近の北朝鮮の宇宙物体の打ち上げ(ミサイルの発射といわれている)をめぐる議論にも見られるように、世界の国々は宇宙を軍事的な意味合いとしてその利用を進めています。先進国はもとより、途上国も宇宙開発を理由にして、核弾頭を搭載できるロケット(ミサイル)や宇宙空間に軍事目的の衛星を打ち上げることに国の威信をかけていることに恐れを覚えます。国際社会は、一九六四年十月に当時のソ連により初めて衛星が宇宙空間に打ち上げられて以来、宇宙の利用について地上の従来の秩序とは異なる新しい秩序を国際連合の下に形成することにしました。しかし大国の論理が新たな秩序としての「平和利用」の大原則を実効的なものにすることを阻害しました。宇宙大国の米ソの間で「平和利用」は非軍事的利用ではなく「非侵略的」であれば良いこととして、実行されてきたのです。軍事的利用が非侵略的軍事利用と解釈することで一気に地上の軍事的利用が、宇宙にも広がることになりました。日本が同じ過ちを繰り返すことが無いように私達は、神の御言葉に聴かなければならない。「わたしは驕る者たちに、驕るなと言おう。逆らう者に言おう、角をそびやかすなと。お前たちの角を高くそびやかすな。胸を張って断言するな。」(詩編七五編五、六節)

 今こそ、イザヤ書二章の終末の平和に示されているように「主の光の中を歩もう」。