夕礼拝感話 3年(30期) 小野寺 珠希(たまき)

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少しだけ私の自己紹介をすると、私はのりを巻いていない塩おにぎりとスヌーピーを愛しています。

この頃出会った本について感じたことを話したいと思います。それは『空が青いから白をえらんだのです』という本です。この本には、今は取り壊されてしまって存在しない奈良少年刑務所の受刑者たちが書いた詩がのっています。彼らは20歳前後の若者で、殺人やレイプなどの重大事件をおこした人です。しかし犯罪をおこしてしまった原因というのは必ずあって、そこには家族や学校の環境・社会環境などが複雑に絡まっているのです。もし彼らに、1つでも助けになるなにかや、理解してくれる人がいたら、もしかしたらその犯罪に至らなくて済んだのかもしれません。そんな彼らのために奈良刑務所は「社会性涵養プログラム」というクラスをもうけて、そこで1度も耕されたことのない彼らの心の荒地を、芸術や文学に触れることによって豊かなものにしていくという企画を始めました。この本の著者 寮美千子さんは、そのプログラムの中で「童話と詩」のクラスを担当していました。

彼女は彼らと絵本を読んだり、それを劇にしてみたりと、彼らが本当は小さいころに経験するはずだったことに、愛をこめて1緒にとりくみました。彼らの中にはドラッグを服用し続けてうまく話せない人や完全に心を閉ざしてしまっている人がいます。それでも皆で、本物の詩を読み合ったり、それについて意見を交換しあったりしているうちに心が開いて、隠されていた彼らの感性が輝き始めるのです。あるとき彼女は彼らに宿題を出しました。「なんでもいいから自分の詩を書いてごらん。もし思いつかなかったら好きな色についての詩でもいいよ」と。そこでの彼らの詩を集めたのがこの本なわけです。本当は全て紹介したいのですが、その中から特に心に残った詩とそれについての思いを伝えたいと思います。

「生きること」

  生まれるためには 自分の両親

 それまでの先祖 色々な人たちの命

 無ければ 自分という人間は いなかった

 感謝して 一生懸命生きなければならない

 そして……

 幸せになりたい

この子がどんな犯罪を犯してしまったのか、家庭環境はどうだったのかは分かりません。この子がこの詩を書くにいたるまでどんなにたくさん涙を流して書いたのかを思わずにはいられません。自分の命に感謝できて、初めて人の命に感謝できるのだと思います。この詩はただ生命のつながっていく不思議を表現したものではないと私は思いました。私の感じたことはこの子の100分の1にもすぎないかもしれないけど、きっとこの子は自分の命が生かされているその奥にある、たくさんの人の愛…いやそれ以上の言葉に表せないものを体いっぱいにかんじたのだと思います。この詩の最後にある「幸せになりたい」という文は他より小さな文字でかかれていたそうです。その言葉の中につまる底しれない強い願いを感じずにはいられません。どうか幸せであってほしいです。

この本を読んだあと、すごく空が青く見えました。ふしぎと涙がでてきました。私は幸せとはなんだろうと思います。幸せってなんなんでしょう。でも言葉にできるものでもないような気もするのです。(「夕会ノート」より)