大森恵子著『ノートル・ダムの残照』―哲学者、森 有正の思索から― 新潟共助会 鈴木孝二

この度森 有正(1911~76)に関する好著が出版された。既に入手された方もおられることと思う。私は昨年末12月入手し、以来3回ほども通読し、手離せなくなっている。

著者の分身三枝蓉子(旧姓辻井)を主人公として小説風に本書全体が展開している。

森 有正の主著『バビロンの流れのほとりにて』(初め1957年刊、後合冊して筑摩書房より1968年刊。その後全集第1巻所収)一冊に集中して森 有正論が進行する。

カラーによる口絵写真、本文中での関係する教会の写真、絵画、バルト海など適切な配置写真で内容理解を手助けしてくれる。著者の

46年余りをかけて熟成させた森 有正論は優れて水準の高いものとなっている。

改めて『バビロンの流れのほとりにて』を本書と共に再読させずにはおかない。また、各章毎の適切な表題と共に、その下に1973年春や1977年秋など記述時の年号が記載され、とても貴重である。私自身、その年、その時、何をしてどのような悩み、考えの中にあったかなど当時を想起させる大切なものとなっている。本書の優れた面である。

共助会関係者にはすでに佐古 純一郎著『森 有正の日記』(新地書房1986年)、久米あつみ著『ことばと思索 森 有正再読』(教文館2012年刊)と貴重な書物を持っている。そのような中、前記の二書と共に合わせて本書は、適切な入門書であると同時に人間・哲学者森 有正理解に貢献してくれると確信する。是非手にして欲しいと願うものである。

激動の21世紀に突入している現在、「パリ国際大学都市日本館」の訪問記述は、館長森 有正を覚えると共に〈平和を造り出す〉土台作りとしてもっと注目していいものである。今一度森有正に肉迫し、現代に生かして行きたい。〔藤原書店2023年刊〕

(日本同盟基督教団 北新潟キリスト教会員)