巻頭言

「キリストは私たちの平和」  角田秀明

8月7日~9日まで、日本YMCA東山荘において夏期信仰修養会が行われました。テーマは「和解」でした。和解と言えば、韓日の和解に道を開いた共助会の先達和田 正氏がおられます。彼は1966年4月28日、韓国の延世(ヨンセ)大学連合神学院で、日本人キリスト者として、日本が韓国に加えた数多くの迫害、蔑視への謝罪を述べました。すると、韓国側の参加者から、「父親が日本の警察に拷問されたことを知って、ずっと日本人を憎んでいたが、和田さんの心からの謝罪の言葉を聞き、憎しみを持っていた自分が間違っていたことに気づきました。どうか、私の罪を赦してください」と、謙遜な態度で願われたのです。どんなに謝罪してもなお足らぬと思う日本人の自分に、その相手の人から逆に謝罪の言葉を聞こうとは驚きと感動を覚えたと記しています。

「実に、キリストは私たちの平和であって、二つのものを一つにし、敵意という中垣を取り除いてくださった。」(エペソ2:14)敵意という隔ての壁を取り壊したのは主キリスト・イエスでした。

修養会から帰った翌日8月10日、共助会員の宋富子(ソンプジャ)さんに浦和教会の礼拝で「愛する時平和の奇跡が創られる」と題して説教とお証をいただきました。在日二世として差別と貧しさの人生を生きていた宋富子さんが、31歳の時、桜本保育園で李仁夏(イインハ) 牧師と出会い、「自分を愛するように、自分の隣人を愛しなさい」(マタイ22:39)を聞き、翌日から聖書研究会に出席し、日本と韓国・朝鮮半島の歴史、植民地時代、戦後の在日一世の苦労を初めて知ったのです。

ユダヤ人の社会心理学者エーリッヒ・フロムは「愛する基本と土台は、知ること、受け入れること」であると言っています。相手を知ることなしに、真に尊敬し、愛することはできません。また、相手をあるがままに受け入れることも愛の核心としています。宋富子さんは、不条理な差別をなくし、平等と平和を創るためにイエス様は選んでくださったのだと、初めて人間としての自分の使命を知ったと語っておられました。                      (日本バプテスト浦和キリスト教会員)