私たちはみな寄留者 林 律
最近の選挙で憂うべき現象が起こった。「日本人ファースト」を党是とする政党の躍進である。旧約聖書も新約聖書も寄留者を大切にすることを強調している。キリスト教徒として大切にして行かねばならない思想信条である。
私たち基督教共助会の先輩方は、このような問題と懸命に闘って来た。私の脳裏にすぐ浮かぶ方々としては、和田正先生、沢正彦先生、李仁夏(イインハ) 先生、小笠原亮一先生等がある。
和田先生は第二次大戦中、洪彰義(ホンチャウイ)、李英環(イヨンファン)、李仁夏さん等、朝鮮半島からの留学生の方々を自宅に招き、聖書(英語)を学ぶ集会を持たれた。当時、すでに英語は敵性言語として政府から使用禁止令が発令されていたのにである。そして、第二次大戦末期に満州熱河省で伝道しておられた福井二郎先生を頼って熱河に渡られた。「一人の中国人だけにでも福音を伝えることが出来れば……」と願ってのことであった。
終戦間際に韓国に帰られたものの、長い間消息の分からなかった洪彰義、李英環の二氏を探訪すべく、沢正彦先生は、和田先生と共に渡韓された。その後、韓国の延世(ヨンセ) 大学神学大学院で勉強されて韓国で、牧会の任にも当たられた。この和田先生と共に渡韓された時に、延世大学の神学生であった尹鍾倬(ユンジョンタク)先生から激しく糾弾され、ひたすら詫びる和田先生の姿に尹先生が感銘を受け、和解が成ったという話は大きな感動を呼んだ。
李仁夏先生は、終戦後も日本に残留され、在日韓国人の人権獲得のために大きな功績を挙げられた。小笠原亮一先生は京都市南部の被差別部落に居を構え、差別撤廃のために大変な努力をされた。
聖書を読んでみると、旧約も新約も信仰者は寄留の民を大切にしなければならないと記している。そして私たちはみな、神によって地球上に寄留を許されている寄留者であると思う。
(日本キリスト改革派 千里摂理教会員)
