巻頭言

鷹のように翼を張って上る     佐伯勲

第一イザヤの特徴であった神の裁きの預言(災いだ)を伝え続ける時は今や終わり、今度は第二イザヤと呼ばれる無名の預言者が、捕囚からの帰還、慰め、救いの回復を語り伝えるよう「慰めよ、慰めよ、わが民を」(イザヤ書40・1)と神様から命じられました。今日、わたしたちの日本、世界、複雑な世界政治、経済力、軍事力を競い合う中で、国と国、人と人が対立、分断、憎しみ、迫害、殺し合う中で、深く傷つき、疲れ果て、絶望、身も心もバラバラになっているわたしたちに真の慰めが求められます。神様が与えてくださる慰め、真の慰め主こそは、主イエス・キリストです。預言者イザヤは真の慰め主を指し示ていたのです。イザヤ書40章31節「主に望みをおく人は新たな力を得 鷹のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない」です。新共同訳は〝鷲〟ですが、〝鷹〟にしました。鷹巣教会だから、鷹にしたんだろうと思われるかもしれませんが、写真は、イザヤ書40章31節の中国語訳の掛け軸です。

中国語の聖書は鷹になっているのです。この掛け軸は、2019年8月、王以琳さん家族が京都に来られたときにいただいたものです。以イーリン 琳という名は、出エジプト記15章27節「彼らがエリムに着くと、そこには十二の泉があり、七十本のなつめやしが茂っていた。その泉のほとりに彼らは宿営した。」から取られています。以琳さんの祖父は、戦前、共助会の先輩たちが中国、熱河宣教に行かれた時に信仰を得られ、しかし、戦後の混乱、日本人から信仰を得たということで迫害され、文化大革命の時には辺境に追いやれ、その後、数々の試練の中にあっても、強靭な信仰を守り通して来られた方です。その信仰がこの掛け軸に込められているように思いました。鷹は、わたしたちに、より強い新しい力を与え、より大きな翼を張って上ることができるでしょう。これこそ、大きな慰めであり、困難な中にあっても主を待ち望み、最後まで神を信じ抜く信仰の翼を大きく広げることができるのです。            

 (日本基督教団 鷹巣教会牧師)