ミャンマー　いのちのお米プロジェクト活動報告（２）阿部真希子　

２０２１年10月に始めた、アジア学院の同級生Ｓさんの働きを支援する募金活動も、気が付けば丸2年が経とうとしています。それだけ人々の苦しみが続いていると思うと、本当に心が痛みますが、現地の惨状を知れば知るほど、Ｓさんや一緒に働くボランティア達の安全と健康が守られ、今日まで活動を続けることができていることは奇跡のように思えます。また同時に、ミャンマーのことを共に覚え、祈り続けてくださる日本の支援者のお一人お一人の存在なしには、活動の継続はできませんでした。日々の生活に追われ、なかなか広報活動もできませんが、それでも多くの方が、毎月の報告を真摯に受け止めてくださり、継続的にご寄付を送ってくださることは、本当に励まされる事実です。神様の深いご計画とお導き、皆様の温かいお祈りに、心から感謝申し上げます。

《ミャンマーで起きていること》

依然、国軍は強制捜査と称して、少数民族の暮らす地域で陸軍、空軍による武力行使を続けています。7月は〝国家の安全と安定〟のため、サガイン管区、チン州、カヤー州における掃討作戦の強化を指示しました。この3つの地域は、反国軍の武装勢力が強く、国軍、地元武装勢力の双方で、最も多くの犠牲と損失を出しています。国連の人道問題調整事務所（ＯＣＨＡ）によると、焼き討ちで焼失した民家の数は、ミャンマー全土で7万戸に上り、最も多いのはサガイン管区の５４、０００戸で、全体の77％を占めています。武装勢力が潜伏しているとした、キリスト教会を狙った空爆や牧師の逮捕、殺害の例も聞いています（少数民族にはクリスチャンが多い）。
7月14日、国軍総司令官は国家の非常事態期間をさらに６ヵ月延長することを発表し、民主化への道は見えぬままです。さらに、新しい2万チャット紙幣の発行が発表されるとすぐに、今までにないインフレで、食料品などの急激な物価上昇が起こりました。7月まで、お米50㎏あたり9万チャット（約４、４１０円）だったものが、8月現在、14万5千チャット（約７、１０５円）まで跳ね上がったそうです（ちなみに、クーデター前の値段は、２万１千～２万５千チャット、約１、０２９～１、２２５円）。何重にも困難を抱えた人々の生活を思うと、本当に言葉を失います。

《アジア学院の卒業生として生きること》

8月の初め、アジア学院校長 荒川朋子さんのお話を聞く機会がありました。今年の学生はミャンマーからの4名を含め、リベリアやカメルーン、東北インドなど、世界的にはあまり知られていませんが、紛争や緊張状態の中にある地域から来ている方が多いと話されました。日本人が行こうとすれば、渡航中止勧告や退避勧告をされるようなところばかりです。でも、彼ら、彼女らはあまり多くを語らないと言います。私も、話を聞きたいと思いながら、彼らの立場を考えると、なかなか切り出せないでいます。ミャンマーの学生たちは、本当に優しく親切で、前向きな方ばかりです。でも、家族や友人を残し、遠く日本で研修を受けている日々の中で、故郷のことを思い出さない日は一日たりともないでしょう。凄惨な事件の報告を読んでいて、彼らの出身地が出てくると、胸をえぐられるような気持ちになります。しかし同時に、こんなに大変な状況下でも、彼らがアジア学院に来て学ぶことに、大きな意味があると信じています。

以前、卒業生部門で働くアジア学院の職員が、ミャンマーの卒業生たちのことを語る時、このように話されました。「草の根のリーダーである卒業生たちは、いつも人々と共にある。人々と共に苦しみ、共に避難する」。ミャンマーの現状を聞くと、法も秩序もない中で、虐殺が起き、難民キャンプすら燃やされ、国内外の人道支援団体も次々と撤退していく。大規模な自然災害が起きても、誰にも守ってもらえない……。そんな状況下で、一体誰が本当に苦しむ人々を助けることができると言うのでしょう。それが、その地に根を下ろし、人々と共に苦しみ、共に避難し、共に生きるリーダーだと思うのです。自らも困窮しながら、他者の為に働くことを厭わない、さらに言えば、どんなに悲惨な中にあっても神に信頼し、希望を捨てないリーダー。そんな貴重な存在を育てるアジア学院の研修意義を、改めて感じる今日この頃です。

現地から毎月送られてくる報告書を翻訳することは、精神的にも肉体的にも苦しい仕事です。なるべく感情を込めず、淡々と訳したいところですが、虐殺された民間人の方や子どもの姿が、どうしても友人たちや自分の子どもたちと重なるのです。しかし、卒後5年が経った今も、日本にいながらにして、同級生たちとつながりを持ち、共に働けることは、何事にも代えがたい恵みだと感じています。

引き続き、友人たちの安全とその働きのために、お祈りとご支援をよろしくお願い致します。毎月、現地からの報告書を翻訳し、配信しております。希望される方は、以下のアドレスまでメールを頂けますと幸いです。

振込先：ソニー銀行 支店名（店番号）：本店営業部 （001）
口座番号：普通 3306902
連絡先：メールjinhee.rose1985@gmail.com
携帯電話080-3077-7854
（浜松バプテスト・キリスト教会員）