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『柏木義円日記』(1998年・行路社刊)を読む (2009年8月号) 鈴木 孝二 

 日本キリスト教史上、また、キリスト教共助会90年の歩みを考えるうえで貴重な出会い、交流が展開していたことを紹介したい。森明(33歳)と安中教会牧師柏木義円(62歳)が、1921(大正十)年軽井沢の地で出会い、会談をしているのである。

(1)清水二郎著 森明 に次の記述がある(104頁)。

「大正10年は、比較的健康に恵まれた年で、春には中渋谷教会会堂(現在位置)建築が成り4月16日献堂式を行って移転、伝道の気勢いよいよ挙がった。7月には、軽井沢外人会堂で行われた日本キリスト教会信徒修養会に、教会の青年山本茂男・本間誠その他数名を誘って参加した。このとき一夜、会堂外の月下の松林散開地で、輪をなして立つ青年一人一人の前に歩を移しつつ、一人一人に苦言と奨励を述べてキリストへの生涯の忠誠を求め、翌朝、離山の早天祈序詹・マルコによる福音書第八章二七節以下のピリポ・カイザリヤの告白について 十字架を負うて主に従う 精神を鼓吹し、強烈な感化を残した。」

(2)この「信徒修養会」に組合教会牧師柏木義円が参加し 日記 に詳述している。

一部省略して引用する(236-237頁)。「7月18日(月)4時起床、8時頃軽井沢駅着、寛吾ト共ニアウデトリュームニ出席、9時開会。斎藤勇氏ト井深氏ノ講演アリ。田島氏、植村氏、小林格氏等ニ逢フ。……4時ヨリ会ニ出席、高倉徳太郎氏ノローマ書ニ就テノ講演アリ。其ノ研究ノ周致(ママ)ナル、論述ノ整然タル、……実に稀ニキクノ講演、嬉レシカリキ。……植村氏今晩ノ懇談会ニテ五分間程勧話シ呉ト云ハレ、……今夜ノ司会者森明氏ニ紹介セラル、……森明氏ノ熱心ナル長キ感話ノ後ニ予五分間程話ス、10時頃帰宿。半田氏ニ泊ル、今日森明牧師モ来会久シ振リニ会談。」(下線筆者)   日本基督教会を代表する植村正久を介して、森明と柏木義円が出会い、その後、親しく会談している。

  非戦論をとなえ、「上毛教界月報」を発行しつつ、時流に抗して生きる義円と共助会創立者森明の人格的出会い、交流の様が、私たちにも伝わって来る。

  翌7月19日には、河本博士別荘にて、植村、高倉、そして森明氏等のもとに、義円が招待される形で、昼食を共にしている。その折の座席表、食事のメニューが、同じく「日記」に続いて載っている。実に興味深い。

  軽井沢での実り豊かな修養会と人格的交流、今に生かしたいものである。