大災害の秋の祈り (2011年7号) 伊吹 由歌子
三月の大地震と津波、原発損傷による放射能汚染。神様からの警告とも思える。七月の台風被害の記憶も新しい八月初旬、共助会員とその友四五名が湯河原に集う恵みを備えられ、二日目からの参加を許された小さな者が、「巻頭言」の重責を与えられた。
津波から脱出した鈴木裵善姫先生、福島の小学校教諭として見えない放射能との闘いに日夜明け暮れる佐川先生など、直接に話を伺い共に祈る感謝の時だった。愛するもの達、家、仕事、全てを失った人々。未曾有で解決も不確定な事態である。一方、節電への自主的な行動や被災者へのボランティア活動など、日本社会に起こりかける価値観の転換、愛ある人間関係へ希求も見ることができる。
二〇〇〇年いらい、米元捕虜を中心に日本軍の連合軍元捕虜個々の体験を聴くのは「皇軍」への学びであり、元日本兵の方々ともお会いする。「生きて虜囚の辱めを受けず」と叩き込まれた戦陣訓の一項は多数の玉砕を産み、カウラ捕虜収容所のように自殺目的の日本兵暴動も生じた。
「命惜しさに捕虜となり犬畜生にも劣る卑怯者」と理不尽な暴力を振るわれ、殺される友を見ているしかなかった若者達は理不尽な恐怖に苛まれ、人間的尊厳を深く傷つけられた。しかしクリスチャンなど少数日本兵の勇気ある愛の行為もまた語られる。
六月に参加した今年の米捕虜大会は捕虜ミュージアム見学をプログラムしていた。ウェスト・ヴァージニア州ウェルズバーグ市立図書館内に捕虜組織元会長の個人資料を基に立上がり、次々と寄せられる元捕虜たちの分厚い調査記録、写真、遺品がボランティア達の手で整理・展示されている。昨年から民主党政府が開始した「捕虜と日本人の友好プログラム」関連の日本紙記事、捕虜達と対話した学生の感想文集もある。戦争を破壊・悲劇・死と位置づけ事実を伝えて平和を守ることを目標に、日本人の協力をも呼びかけており、関心とご加祷をお願いしたい。保土ヶ谷にある英連邦墓地で毎年八月、日本人主催の「捕虜追悼礼拝」が捧げられるが、その実行委員長・奥津隆雄牧師とミュージアム関係者のエール交換が始まった。キリスト教基盤のない日本社会で組織に埋没せず、神の愛に生かされようと生きる者に、米社会のマイノリティーである米元捕虜たちの信仰は励ましである。十月後半、民主党政権による第二回招聘で七人の米元捕虜が来日する。
一方、東北の教会には参会者が増えたと中渋谷教会の礼拝で及川牧師が報告された。感謝のうちに各自の祈りを篤くして歩みたい。