シンガポール便り3 韓国教会との合同礼拝 伊藤 世里江
はじめに
「共助」の2024年第5号がいつもより分厚いことに気づきました。不思議に思って手に取り中を見ると、後ろ表紙からが韓国語になっていました。3月の共助会の韓国訪問の詳しい報告が日韓両国語で書かれていました。ちょうどわたしたちの教会が毎年行っている在シンガポールの韓国教会Word of Life教会との合同礼拝の準備をしている最中でした。さっそく韓国教会の牧師に『共助』をお渡ししたところ、たいへん喜んで受け取っていただけました。
韓国教会との合同礼拝のはじまり
シンガポールにある日本語教会である私たちの教会と韓国教会との合同礼拝は2014年8月から始まりました。8月15日の韓国の独立記念日であり、日本の敗戦記念日を覚え、両国の歴史を覚えつつ、平和の主を共に礼拝できることを感謝して、一緒の礼拝をしようと始まりました。きっかけとなったのは、当時、韓国教会の牧師であったハンジュンイル牧師です。その彼は日本への宣教の思いがある方で、神学生時代から私たちの日本語教会にご家族で出席しておられました。私たちの教会もハン神学生が日本への宣教の思いを持っておられることを感謝し、神学生時代から奨学金のサポートなどもしました。わたしが2013年にシンガポール国際日本語教会に赴任後も2か月に1度くらいのペースで説教を担当してくださっていました。2014年から韓国教会Wordof Life 教会の主任牧師となられ、ハン牧師から二つの教会が平和を覚えて、合同礼拝をするのはどうか、という提案をいただきました。その後、韓国教会の側は牧師が何度か交替しましたが、8月の合同礼拝は双方の教会の大切な活動として継続し、今年は11回目を迎えました。
2016年には韓国教会が計画したインドネシアのバタム島でのミッショントリップに私たちの教会からも参加させていただきました。韓国教会と日本語教会の若者たちが中心となり、インドネシアの子どもたちのために一緒にゲームをやったり、聖書のお話や工作などの活動をしました。言語は違っても、思いは伝わるもので、とても印象に残る多言語、多民族ミッショントリップとなりました。
韓国は世界中に宣教師を送り出している国です。わたしもシンガポールに来てから、南太平洋のフィジー島や南アフリカのヨハネスブルグで、バプテスト関係の集会や大会に参加することがありましたが、どこに行っても、韓国人宣教師がいて、活発に活動をしておられることに、いつも圧倒される思いです。日本でもどれほど多くの韓国人牧師や韓国人信徒の方々が日本の教会の働きを担っておられることか知れません。『共助』でも韓国人牧師、信徒の方々の記事を拝見しています。
韓国教会との合同礼拝を続ける中で、毎年、日韓の歴史にかかわるトピックスを取り上げるのですが、その題材に事欠かないほどに、日本の弾圧の歴史があることを思います。
今年はオリンピックがちょうど開催された直後でしたので、1936年のベルリンオリンピックで、当時、植民地下でマラソンに参加し、金メダルをとったソン・ギジョン(孫基禎 Son Kijong)さんと銅メダリストだった ナン・スンヨン(南昇龍Nan Sung―yong)さんのことを紹介しました。表彰台で日の丸が掲げられ、君が代が歌われることを彼らは非常に複雑な思いで、受け止めきれなかったこと。翌日の韓国の新聞『東亜日報』は孫の胸の日の丸を黒く塗りつぶして、新聞の一面に報じたことから『東亜日報』はその後日本政府により発行禁止となったことなどを紹介しました。
ほとんどの日本側の参加者はこの出来事を知りませんでした。韓国側も年配の方々は知っておられましたが、若い世代の人たちはあまり知らないようでした。
昨年は関東大震災から100年でしたので、大震災直後のデマによる朝鮮人虐殺事件のことに触れました。
合同礼拝を継続する中で、痛感してきたのは、日本の学校教育の中では朝鮮半島の搾取をはじめとするアジア諸国への加害の歴史がほとんど教えられていないことです。
韓国側も60代以降と50代以下では、日本に対する意識が大きく違うことを11年間の間にも感じてきました。若い世代は漫画やJポップ、ファッションなどの影響が強く、日本への対日感情は好意的になっていると思います。しかし、日本人としては、同じ過ちを繰り返さないために、過去の負の歴史も学ぶことは、次の世代への責任であると思います。
韓国教会との合同礼拝は、韓国教会の豊かな賛美にも励まされています。韓国教会の賛美チームは日本語でも賛美を練習してくださり、準備をしてくださいます。私たちの側は韓国語の発音はまったく自信がないので、韓国語で賛美するところは韓国教会のみなさんに手伝っていただいています。
さまざまなやり取りは英語で行うことが多いのですが、11年間、合同礼拝を続けることで、お互いの信頼関係も増してきていると思います。子どもたちも合同の教会学校を楽しんでいます。
これからも在シンガポールの日本語教会と韓国教会の合同礼拝が継続し、互いの歴史と文化を知りつつ、一つの同じ主を賛美できる恵みにあずかりたいと願っています。
(シンガポール国際日本語教会牧師)