荒川朋子著 『共に生きる 「知」 を求めて―アジア学院の窓から』 角田芳子

荒川朋子氏が、初めての本を出された。校長職についておられ多忙の中、執筆されたことにまず拍手である。共助会の色々な場面で、荒川氏を通し様々と情報は得てきたつもりだが、ほんのかけらしかアジア学院について知らなかったことに気づいた。しかし、本書を通し学院の全体像が浮かび上がってきた。那須塩原市にある6ヘクタールもの広大な敷地に1973年に建てられた、開発途上国と言われている国々からの農業指導者を招き、指導者養成を行う専門学校である。学生数は30名ほどということであるが、その目的が素晴らしい! 「主イエス・キリストの愛にもとづいて、世界の農村社会の人々の向上と繁栄に献身する中堅指導者を養成し、公正で平和な社会の実現に寄与する」その目的達成のために、「共に生きるために」との学院モットーが、揺るがない柱として、すべてを支えているとのこと。私も、長いこと聖学院という学校ではたらかせていただいたが、「神を仰ぎ、人に仕う」とのスクールモットーを各教室の黒板の上に貼っていた。幼稚園から大学院まで、創立110年を経ても貫かれている。モットーが揺らいでしまうと、外側がどんなに立派になっても、学校の存在意義が失われてしまう危険性がある。責任を負う管理職はじめ、職員そして園児・児童・生徒・学生たちに至るまで学校は、どんなことを大切にしているか共有してほしいと願っている。

文中にしばしば登場する高見敏弘氏から、荒川氏は多大な影響を受けられた様子である。この先生に私はお会いしたことは、もちろんないのであるが、いつも優しい笑顔で対応してくださったこの方に、お会いしたような気持ちになった。そして女性がリーダーになることの大切さを、荒川氏によくお話しくださったようである。先見の明があった方であることを教えられる。語られるシンプルな言葉は、荒川氏の人生の節々で支えとなっていることを教えていただいた。2015年に校長という大任をお引き受けした素地に、高見氏の言葉があったことは想像にかたくない。

女性が果たす役割が、国の応援もあり少しずつではあるが動き始めた2023年の日本の状況である。しかし、全体的に考えれば、女性国会議員数は国際的に下から数えて何番目という状況がずっと続いている。人口は、ほぼ男女同数でありながら、女性リーダーはほんの一握りであるのはなかなか変わらない。著者は、本の最後で「キリスト教共助会の女性の歩みを覚えて」という文に触れておられる。これは、2022年のキリスト教雑誌『共助』で取り上げられた内容でもあるが、共助会に期待すること、いや、共助会や佐久学舎だからこそ期待したい事が様々と取り上げられている。ジェンダー平等への向き合い方が、今後の共助会にとっても重大なテーマになることを示唆しておられる。私も全く同感であり、共助会だからこそ抱えている問題点に気付き、改善していく高い意識を持つよう期待し、共助会の一員としても心掛けたいと思う。ジェンダー平等指数第一位のアイスランドの例を取り上げておられるが、我が国に改革の波が少しでも及ぶことを祈りたい。

(華道家、日本バプテスト浦和キリスト教会教会員)