巻頭言

高価な真珠  木村葉子

「天の国は、高価な真珠を見つけた商人が持ち物をすっかり売り払って買うようなものだ」(マタイ13:45、46)

この夏、映画「太陽の子」を見た。戦時下、軍の命令により京大物理学者荒勝文策の下で原子爆弾の開発が行われていた。黒崎監督が、若き科学者の残した日記を目にして脚本化した。ウラン濃縮高速遠心分離器が何回も暴走し破壊し失敗が続いたので、荒勝教授は「核分裂の無限のエネルギーを得れば戦争は無くなる」と鼓舞する。主人公の修は、実験オタクで、「新しい真理を手にしたい」と科学に取りつかれ狂気がにじむ。8月6日広島に原爆が投下された! 調査に行きその破壊力の惨状に、「これが自分たちが求めていたものか」と呻くが、「次は、京都に原爆が投下される」と目撃撮影のため比叡山に登って行く。理想と倫理を欠く国は亡ぶ。人が真実に生きるには人格的な真理の指針が必要だ。

この7月に逝去したノーベル賞物理学者益川敏英は、幼時、名古屋大空襲にあい、科学者の軍事研究反対運動をして来た。「憲法前文は涙が出るほど美しい」と「安保法制は違憲」訴訟を闘う反骨の平和主義者だった。教育基本法改悪反対に賛同し、2009年九段会館で、「教育と自由」という基調講演をされた時、控室で笑顔で励まし、何とギリシャ語で「真理は汝らを自由にする」と書いてくださった。

昨年の初夏、ふと耳にしたスマホの言葉に引き寄せられた。力強く福音の真理を語るフォーサイスの説教だった。彼の名を知ったのは、若き日愛読の森明著作集である。私は感謝にもその川上直哉牧師のオンライン読書会に入れて頂いた。毎回、心に光が差し込み希望が広がった。彼はイギリスの神学校長・神学者。「活けるキリスト」の一節には、「『キリストが、贖い保護し救う方であるとしても、それは自分に関係がない』と思っている人にも、キリストはその巨大な祝福を与え続けています。欧州の文明、近代国家はキリスト教なしに成立しえなかった。それは今なお真実です。特に『愛』と『愛の進歩』について考える時、本当に真実だと分かるでしょう」。また「聖なる父」を読み、神の聖さとキリストの謙遜を示す贖罪の意味を深められた。「『聖なる神にとって罪が一体何を意味するのか』、キリストの働きとは、その神の深き御旨を人間の内に刻むことである」。当時、英国で人気の「新神学」に対し福音信仰の死活として心痛む論争を行った。1914年、第一次世界大戦開戦にドイツの神学者達が翼賛するのに驚き、教え子らの戦死を悲しんだ。彼の優しさを示すものとして、後年、和解した論敵自身が、「論争が激しさを増す中でフォーサイスが『誰よりも私の近くにいてくれた』のだと回顧している」ということだ。友を憂い愛する人格、主にある友情において、36歳の生涯を主に捧げた、森明を髣髴(ほうふつ)とさせられた。

(ウェスレアン・ホーリネス教団ひばりヶ丘北教会 協力牧師)